スタートアップにとっての自社サービスと受託
「IoTはなぜ儲からないのか」という記事で数年ぶりに連絡をしてくれた元同僚がやっているスタートアップに遊びに行った。
彼も自社サービスから受託を経験し、また自社サービスにチャレンジするという。やはり挑戦する起業家は目が輝いているしこちらもエネルギーをお裾分けしてもらった気分に成る。
私も起業して最初に作った自社サービス(農業用IoTサービス)が大コケしてしまい、その後現在に至るIoTクラウドへピボットするきっかけとなるのだが依然、成功とは言えない状況で自社サービスの難しさを日々痛感している。
ここではスタートアップ期(創業5年以内)のベンチャーが自社サービスと受託をどうバランスさせながら乗り越えていくべきかを試行錯誤の身として考えてみたい。
ラーメン代稼ぎの重要性
シードマネーが潤沢に準備または調達できている場合を除き、最初の売り上げが立つまでに基本的に資本金を燃やしながら、必要に応じて創業者自身からの役員借入金も加えて事業を運営していく。
この過程で、運転資金としてのキャッシュ稼ぎは重要で当座の入金予測が立ちやすい受託は魅力的である。
一般論としては、受託と自社サービスの両立は「中途半端」で終わると考えている。受託をやっているうちに受託一本になってしまうスタートアップの話を聞くからだ。
創業1年目は自社サービスにフルコミットし、サービスの立ち上がりの状況によっては受託もやるといった感じでまずは自社サービスを優先させた方が後悔も少ないだろうし得るものも多いのではと思う。
作るの2割・売るの8割
典型的なエンジニア出身創業者(私自身も含め)の場合、自分のアイデアで自分の技術で作った自社サービスが売れない訳がないと思っている。私の場合は、最初に作った自社サービスが日経新聞にも掲載され展示会でも活況だったのに関わらず大コケしてしまい、メディアの反応と市場の反応は全く比例しないという現実を学ぶ事となった。
農家向け製品だったので九州地方で新聞広告も試してみたりしたが問い合わせのハガキ1枚が来ただけだった。
新聞広告など一定期間継続して効果があるようなものに手を出した時点でスタートアップが取る作戦ではないのはマーケティング経験者であれば判ると思うがそのレベルの判断さえ当時は出来なかった。
相応の金と時間を投じて学んだのは以下:
- 買ってもらうのは消費者が取る最終行為であって、知ってもらわないとその入り口にも立てない
- 一過性か、その後につながるかのメディア特性とマーケティング投資を見極める
自社サービスは作ってからが本当のスタートだ。
受託というビジネス構造の限界
受託はoutputが決められているので、要件通りの案件をいかに回すかが売り上げの多寡に直結する。
合理的に売り上げを突き詰めようとすれば経営者はいかにエンジニアの頭数を揃え、案件に突っ込んでいくかという人月的な発想をせざるを得ない。
outputとしての対価はキャッシュで得られる代わりに会社に残すべき知的財産は残らず中長期的にみれば先が無い商売というのは明らかだ。
(ここでは受託自体を否定している訳ではなく、受託したノウハウを自社ビジネスに活かせない受託はやるべきで無いという考えだ)
せっかくスタートアップなのだから、リスクを取った分自社サービスに賭けてみてほしい。
まとめ
やりたい事を突き詰めるには自社サービスという選択肢は最高だ。
その代わり、作ってからが大変だ!という話でしたw