なぜIoTは儲からないのか
2017年も終わろうとしているが、「今年はIoTが来る!」と毎年言われて久しい。
3年半、IoTと言われるビジネスに関わった経験で現状のIoTについて考察してみた。
個人的に製造業の顧客が多かったのでかなり主観が入っている。
提供者サイド
- 既存ビジネスの延長でIoTをやろうとしている
既存のビジネスのフレームワーク内で完結させようとしているため、既存のソリューションや営業メソッドを適用してしまい結果として技術的ミスマッチ、コスト過多、頓珍漢な営業アプローチにより失注といった事態が散発している。
- 営業に対する負担の増加
IoTは構成要素の異種格闘技戦であり、レイヤ毎にどのようなプレーヤーがいて、どのくらいのコスト感でインテグレーションできるかという感覚が必要である。
SI/NIer上がりの営業であればマルチベンダの商材を扱うのは日常なので比較的スムースな提案につながるのだが、いわゆるカタログ売りしかやってこなかった営業にとって非常に売りづらいものとなっている。
- エンジニアに対する負担の増加
上記と同様なことがエンジニアにも起こっている。UI/UXのフロントエンドしかやらない、クラウドしかやらない、組み込み以外は俺の仕事じゃないといった押し付けがほうぼうで発生している。いわゆるフルスタックエンジニアという存在は希望してなれるものではなく、個々のエンジニア経験の結果として存在しているような状況なので市場から採用しようにもそもそも採用できないような状況である。
消費者(現場)サイド
- 製造業の現場に於いて、ラスト1マイルのレガシープロトコルのIP化が進まない。
工場等の現場に行けば20年どころか30年選手の設備が平気で稼働している。これらはシリアルIFなどあればまだマシで、ほとんどは独自仕様またはそもそも外部出力がないという状況である。データを取りたい機器は目の前にあるのにIPプロトコルへのブリッジングが最大のハードルになっている。
- 既存フィールドバスへのロックイン
Modbus/CANなど既存のフィールドバスへのノウハウが秘伝のタレの如く蓄積・継承されてきているので、IP化の先にあるIoT化というゴールに対してインセンティブが働きにくい。
これは現場にとってみれば当然であり、敷設したシリアル配線のUTP化のコスト、既存ベンダとの付き合いの変化、構内サーバの収集ミドルウェアをクラウド化した場合のコスト、画面設計など余程の経済効果や現場負担の軽減が定量提示できていない限り絵に描いた餅で終わるだろう。
消費者(経営)サイド
- IoT化への投資に対しての利益計上が不透明
単に可視化程度のソリューションでは、歩留まりの可視化や予防保全によるライン停止撲滅につながっても投資以上のリターンを生む効果があるかは実際にやってみないと不透明だろう。
オーナー型で積極的な設備投資を好む攻め型の中小企業の経営者であっても、IoT化の投資が各種助成金の対象になるかどうか、コストが妥当なものかも専門家の手を借りないと即決する状況にないだろう。IoTの案件なのに本質的な全体の仕組みや儲けの仕組みを考える以前に補助金の申請書作成に時間が割かれている案件も耳にする。
業界サイド
- 売るものがない
スマホやクラウドといったトレンドも一通り定着し、次はIoT、AI、VRといった感じで次なる飯の種を探さなければならない。とりあえずIoTをキーワードに入れておけばいいんじゃね?といったサービスやプロダクトも乱立し提供者自身が既に何を売りたいのかわからなくなっているような所もチラホラである。
どうすれば儲かるのか
- 思考停止した設計書ありきの提案からアジャイルでとりあえず始める提案へ意識改革
- マルチベンダ対応能力のある営業を増やす
- フルスタックエンジニアの獲得と養成
- IoTは投資であるという経営者の認識と覚悟
- IoTに対する過剰な期待の創出をやめ、真摯に顧客課題の解決に向き合う覚悟
まとめ
かなり綺麗事な問題提起かつ無理筋な結論になってしまった感がある。市場黎明期はいろんなチャレンジと犠牲があって本物の市場形成と成って行くのであろうw